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ラヴェル:『ラ・ヴァルス』

アンドレ・プレヴィン指揮  ウィーン・フィル


『ラ・ヴァルス』とは、フランス語でワルツを意味する言葉。

作曲の経緯については、J.シュトラウス2世へのオマージュとして交響詩風のウィンナワルツを書きあげようと計画されたとか、

1914年には交響詩『ウィーン』という名称にすることが、ほぼ決定されたとか【いずれもWikipediaより】、

二転三転の末に、1920年にようやく脱稿されたと言われています。

ところで、演奏時間12〜13分のこの曲を聴いて、皆さんはどんな印象をお持ちになるのでしょうか。

私はこの曲の最大の魅力は、その破壊的なエネルギーにあると感じているのです。

混沌とした低弦が渦巻く中、茫漠としたリズムとメロディーが現われ、やがて薄明の中での幻想的なワルツへと発展します。

やがて、ゆったりとした第2のワルツが現れますが、これはリズムやテンポを崩しながらも、

破壊的なまでのエネルギーを蓄えつつ、コーダに向かって突進し、最後の2小節で炸裂して、曲は終わります。

前述した1914年は、オーストリアの皇太子が、セルビア人の民族主義者によって暗殺されたことが引き金となって、第1次世界大戦が勃発した年に当たりますし、

偶然にも、ちょうど100年前の1814年は、混乱したヨーロッパを正常化するために“ウィーン会議”が開かれた年でもありましたが、各国の利害が入り乱れて議事は進行せず、毎夜のように親睦を図るための舞踏会が行われたため、

「会議は踊る、されど進まず」と揶揄された、そんな年でもありました。

世界史上のそんな二つの事実と、音楽の内容を関連付けることに無理はあるかもしれませんが、私はそこに、フランス人ラヴェルがこの曲に託した、強烈なアイロニーを感じるのです…。

この曲は、アンドレ・プレヴィンがウィーン・フィルを指揮したライヴ録音を愛聴しています。

彼特有のエスプリに溢れたセンスと、ウィーン・フィルが奏でるワルツの美しさに加えて、

ライヴ特有の凄まじい熱気が、この音楽の神髄をついた演奏と思えるからです。

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