最近聴いたCD

メンデルスゾーン:交響曲第4番『イタリア』

ジョゼッペ・シノーポリ指揮  フィルハーモニア管弦楽団


この曲を初めて聴いたのは、FM放送から流れるトスカニーニ/NBC交響楽団の演奏でした。

第1楽章冒頭部が始まった途端に、部屋の雰囲気が一瞬にして晴れやかに変化し、陽光降り注ぐ南国イタリアに誘われたような感動を受けたこと、今でも鮮明に覚えています。

冒頭部での感動を再現すべく、同じLPを買ってきて、自宅の再生装置にかけましたが、結果は「?…」。どなたも、一度は体験されたことではないでしょうか。

同じスピーカーから同じ演奏が流れていても、プレーヤーやアンプが異なると、曲の表情が微妙に異なること、

言い換えれば、曲に感動した時には、無意識のうちに微妙な音のニュアンスまでをも聴き(感じ)取って、それを記憶しているせいかもしれませんが、

たとえ高級機といえども、使用機器が異なってしまうと、同質の感動を再現することは至難の業であること、後年になって知りました!

ところが、シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団のCDで、第1楽章冒頭部が開始された途端に、嘗てFMでトスカニーニの演奏を初めて聴いた時と同じように、一瞬にして部屋の雰囲気が、晴れやかな南国イタリアに変貌したのには、驚きました。

素晴らしい推進力、鋭いリズムの切れ込み、美しいカンタービレが具わった演奏であることに加えて、

可聴領域に達するかどうかの弦のうなりが再生されることによって、このような印象が得られたのではないかと、自分なりには考えています…。

ゆっくり目のテンポで演奏される第2楽章は、紺碧の空のもとで粛々と執り行われる宗教的な儀式を髣髴するような、憂愁を帯びた美しい曲であり、気高さまでもが感じられる演奏だと思います。

遅めのテンポでゆったりと歌われる第3楽章の静謐な美しさも、特筆もの!この演奏を聴くと、秋の日の夕陽を受けて茜色に染まるうろこ雲を見るような感慨に包まれます。

強く厳しいリズムで演奏される、活気に満ちた終楽章の、情熱的な高揚感に圧倒されて、曲を聴き終えました!

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