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ゾルタン・コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』

サー・ゲオルグ・ショルティ指揮  シカゴ交響楽団


『ハーリ・ヤーノシュ』とは、古くからハンガリーに伝わる老兵の名で、大法螺を吹きながら、戦争の手柄話をするという人物。

オーストリア皇帝の娘で、ナポレオンの妃であるマリー・ルイーズに見初められたとか…

出世するハーリを妬んで画策された戦争で、独りでナポレオン軍を打ち負かしたとか…、そんな内容の物語です。

ハンガリーでは、「聞いていてくしゃみが出る話は、本当のこと!」という言い伝えがあるそうですが…

管弦楽のグリッサンド(音階を滑るように演奏すること)による盛大なくしゃみで、少しばかり風刺のきいた楽しい物語は始まりますが、

それだけではなく、随所に深い情感をたたえたハンガリー民謡が登場するためか、民族の力強さが感じられる、内容の濃い、聴きごたえのある名曲だと思います。

前述のごとく、盛大なくしゃみで開始される第1曲“おとぎ話は始まる”では、続いて低弦で奏される物悲しくも実体感の希薄な旋律には、男の儚いロマンが感じられ、ハーリの誇大妄想的な性格を表現しているようです。

第2曲“ウィーンの音楽時計”は、愉しく美しくはあるのですが、どこか軽薄で虚しいきらびやかさが…。

第3曲“歌”は、ヴィオラの歌うしみじみとした歌、クラリネットの奏する牧歌的な旋律、民族楽器ツィンバロンの響きが郷愁を掻きたてるような、しみじみとした佳曲だと思います。

第4曲“戦争とナポレオン軍の敗北”では、途中でフランス国歌までが登場して、戯画的で時にずっこけるような、楽しい音楽です…。

第5曲、ジプシー音楽を思わせる、美しく情熱的な“間奏曲”

第6曲“皇帝と延臣たちの入場”での、大げさでユーモラスなファンファーレや行進曲は、戯画以外の何物でもありません…。

でも、エントリーしたこのディスクは、作品の力強さが印象に残る、素晴らしい演奏だと思うのです。

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