それぞれの曲に、順に“暁”“昼”“夕暮れ”という標題が付されていることからも、文字通り、山の一日の自然の移り変わりと、人々の生活を描いた作品と言えるでしょう。
第1曲“暁”の冒頭は、弦の微妙な音の揺れからは、霧が立ちのぼるさまに加えて、ひんやりとした湿っぽさまでが感じ取れる、見事な表現だと思います。
そして弦の音色は、徐々に明るく乾いたものへと変化していき、鳥たちのさえずりも聞こえ始めて、晴れやかな一日の始まりが感じられる、清々しい音楽です。
第2曲“昼”では、じりじりと照りつける陽の光の強さが描写されているようですが、それでも穏やかが漂っています。
時折、雲によって陽射しが途切れた時に揺らめく大気の、その涼しさまでもが感じられます。
遠くから聞こえる舞曲風の音楽が聞こえる中、雲が湧き上がって雷雨がやってきますが、
それは自然の猛威を知らしめるような凄まじいものではなく、あくまでも自然の恵みの一つと感じられるような表現。
すぐに遠ざかって、再び穏やかな自然が訪れます。
第3曲“夕暮れ”での舞曲風の音楽は、山で生活する人々の楽しい集いが描かれているのでしょう。
この中で使われる、タンゴール(長い棹を持つトルコの民族楽器)とピアノの響きには、エキゾティックな不思議な雰囲気が感じられます。
やがて夜のとばりがおりて、グレゴリア聖歌(風)が流れる中、敬虔な静けさの中に一日が終わります。
日々のごく普通の光景を題材にした、軽いエッセイ風の作品ですが、しかしながら卓抜な自然描写ゆえに、珠玉の音楽に仕上がったと思います…。