第1曲:春、第2曲:九月、第3曲:眠りにつく時(以上はハイネの詩)、第4曲:夕映えの中で(アイヒェンドルフの詩)
以上の4曲から構成されており、いずれも“死”をテーマに詠われたもの。
80歳を超えたR.シュトラウス最晩年のこの作品は、
第二次大戦のために崩壊した、祖国ドイツの貴重な文化遺産の復興、
とりわけ彼にとってゆかりの深い、ドレスデン、ワイマール、ミュンヘンの復興した姿を、生あるうちに再び見ることはないだろうと感じ、
いたたまれない悲しみを込めて、最期のメッセージとして取り組んだものだと感じられます。
全曲にわたって、昔日への望郷の思いや、再び巡り会うことのできない寂寥感に支配された感銘深い曲集で、
後期ロマン派の作品の中でも、屈指の名曲の一つだと思っています…。
ところで今回エントリーしたこのCD、最近は音楽情報に疎くなったこともあり、ソプラノのジェシー・イーグレン、指揮者のドナルド・ラニクルズ共に、初めて聞く名前でした。
第1曲こそ、オケも声もR.シュトラウス特有の、移ろいゆく色彩感が希薄なように感じられたのですが、
第2曲の後半、歌声がとぎれて、疲れた心を慰めるような安らぎに満ちたホルンの音色が奏された時から、俄然演奏に惹きつけられていきました。
第3曲での、虚空をさまようようなソロヴァイオリンとソプラノの儚い美しさ、
第4曲でのフルートが奏するヒバリの歌声は、
永遠なものへの崇高なまでの憧れと、
去り逝くこの世への寂寥感を象徴するようで、
この演奏の至高の美しさに、心が洗い清められるような思いがしました…。
これまで私が愛聴してきたカラヤンの二種類のCDからは、寂寥感の中にも、夕映えの残照に輝くような、いかにもシュトラウス的と思える壮麗な美学を感じ取っていたのですが、
同じ寂寥感でもこちらのCDからは、詩を尊重したかのように静かに眠りに落ちてゆく、そんな感慨を抱きながら、曲の余韻にまでじっと聴き入った演奏でした。