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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番
(ラズモフスキー第1番)

アルバン・ベルク弦楽四重奏団


ロシア公史のラズモフスキー伯爵から依頼されて書き上げたために、広くこの名称で呼ばれている3曲の弦楽四重奏のうちの一つで、

ベート―ヴェン中期の傑作と言われています。

いきなりチェロによって奏される第1楽章第1主題は、大らかでスケールの大きさを感じさせる音楽です。

私はこの冒頭の主題を聴くと、慈悲深く、懐の深い、包容力のある高邁な人物像を連想して、懐かしさや憧れに通じる、快い感慨を覚えます…。

第2楽章のスケルツォは、前楽章とは対照的に、いささか無骨と感じられるリズムと、

憂愁を帯びたメロディーとの掛け合いが印象的な、どこか人間的な親しみが感じられる音楽。

ここまでの2つの楽章では、アルバン・ベルク四重奏団は、ベートーヴェンの強い意志を表現するかのように、時にアンサンブルよりも力強さを優先するような解釈を採っているように思えます。

第3楽章では、ヴァイオリンの奏する第1主題から、静かな深い悲しみの音楽が始まります。

このアダージョ楽章でのアルバン・ベルク四重奏団は、前の二つの楽章とは異なり、感情の振幅を極力抑えた演奏を展開していきますが、

その対照的な解釈によって、逆に内に秘めた悲しみの深さが聴き手の心に伝わってくる、超の付く名演奏が誕生したのではないのでしょうか…。

休みなく始まる第4楽章は、“兵士の帰還”という名のロシア民謡を主題にしたもので、兵士の悲しい運命を、母との問答の形で歌ったもの。

原曲はゆっくりとしたテンポで歌われるそうですが、

アレグロのテンポが指示されることによって、悲しみに中に力強い意志がこめられた曲へと、昇華されたように感じるのです…。

終結部ではロシア民謡の主題がアダージョで奏され、最後には決然と曲が終了する、いかにもベートーヴェンらしい主張の込められた作品だと思います。

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