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モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番『不協和音』

アルバン・ベルク四重奏団


深い闇に閉ざされた心のように、行き場のない不安を感じさせる、印象的な第1楽章冒頭のアダージョ部分。

ここに、当時としてはきわめて斬新だった『不協和音』が使われているために、このような奇妙な名称がつけられたようです。

しかし、主部のアレグロに移行した瞬間に、モーツァルトらしい明るく伸びやかな旋律によって、一気に視界が広がり、不安の解決に向かって曲は進みますが、それに至ることなく、第1楽章は終了します。

第2楽章は、美しい旋律が、不安な心を優しく慰めてくれるのですが、それでも、ふと悲しみがよぎります。

この楽章での、切なさを感じさせる微妙なニュアンスを湛えたアルバン・ベルク四重奏団の美しい響きは、特筆もの!!

第3楽章のメヌエットのシンフォニックな響きには、試行錯誤しながらも、ようやくの解決の手掛かりがつかめそうな、そんな明るさが垣間見えます。

そして終楽章の軽快なアレグロでは、ようやく見えてきた光明に向かって前進する喜びを感じさせつつ、曲は終了します…。

弦楽四重奏第14〜19番(ハイドン・セット)は、敬愛するハイドンに献呈するために作曲されたもの。

大先輩を意識してか、モーツァルトには珍しく、2年をかけて推敲を重ね、ようやく完成に至った作品群と言われています。

そのためか、この曲やケッヘル番号がひとつ前の第18番に関して言えば、

深みのある味わい深い旋律を、素晴らしいと思いつつも、

モーツァルト特有の、想像力に溢れた天真爛漫な曲の展開が、この2曲に関しては、どこか形式的に感じられてしまうのですが…。

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