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J.S.バッハ:イギリス組曲第2番

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット


イギリス組曲”というのは、バッハ自身が付けた名称でもなく、曲の内容や形式を表したものでもないようです。

その由来は、イギリスの貴人のために書かれた曲と伝えられていたために、後世の人がこの名で呼ぶようになったと伝えられています。

ただ、愛妻アンナ・マグナレーナとの出会い・結婚があり、音楽家としての地位・収入にも恵まれ、バッハが生涯で最も充実していたと言われるケーテン時代の作品であるために、

同時期にクラヴィーアのために作曲された“パルティータ”や“フランス組曲”ともども、穏やかな幸福感に満ちた作品と感じられます。

先日、アンジェラ・ヒューイットの演奏する第2番を聴いた時、

その慈しむような愛情に満ちた演奏は、さながらバッハが愛妻をイメージしながら書いた作品のように感じられました。

若々しい愛らしさが感じられる第1曲:前奏曲

毅然とした高貴さが漂う第2曲:アルマンド

聡明で、テキパキとした所作を思わせる第3曲:クーラント

深い思いやりや優しさが感じられる第4曲:サラバンド

機知に富んだ印象を与える第5曲:第Tブーレと、思慮深さも感じさせる第Uブーレ。

そして、インスピレーションが次々と湧きあがるような、喜びにあふれた第6曲ジーグ。

私はバッハ演奏には、リズムが重要な要素であることを知りつつ(歌うだけの演奏に辟易したことを、何度か体験しました)、

それが表立たない、旋律の美しい演奏を求めていたためか、

定評あるグールドの演奏も含め、これまでこの曲を好ましく思う演奏に、出遭えませんでした。

しかしカナダ人の女流ピアニスト、ヒューイットの演奏は、これまでのイメージを完全に払拭してくれました。

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