昨夜は、久しぶりに爽やかな夜で、毛皮のコートをまとった彼女らもぐっすりと眠れた様子で、意気揚々と散歩に出かけたのですが、
生暖かく湿気をたっぷりと含んだ南風に吹かれたために、かえって汗ばんでしまいました。
そんな不快感を晴らして、爽快に気分転換をするのにふさわしいと思うのが、スッペの序曲です。
中でも、『詩人と農夫』は、
抒情的で美しい歌あり、
楽しげなワルツあり、
運動会を思い出すような乗りのよい曲ありの、
楽しさがてんこ盛りされたような音楽です。
冒頭、さも厳かそうに鳴り響くホルンとトランペットに続く、フルートとハープに彩られて奏される独奏チェロの旋律は、
その耳障りのよい美しさゆえに、全てのもやもやとした気分が雲散霧消してしまうような、そんな音楽です。
思いのたけの感情を吐き出すような管弦楽が鳴り響き、それに続いて奏されるワルツは、
シュトラウス・ファミリーの作品のように、王侯貴族のための優雅なものではなく、
少し勿体をつけた、とぼけた味わいの、庶民的な楽しいものです。
そして曲は、私達が子供の頃の運動会で流されていた、ワクワク・ドキドキするような音楽へと転じて、
“気分はすっかり日本晴れ”で終わるという、趣向の凝らされた(?)音楽です。
若き日のカラヤンの颯爽とした演奏もありますし、
気分がウキウキするような愉しげなリズム感と、美しい響きが魅力的なデュトワ盤もありますが、
あの学者のような顔をしたNHK交響楽団の名誉指揮者サヴァリッシュが、バイエルン国立歌劇場管弦楽団を振った演奏は、
オペラに登場する様々な音楽の表情を、生真面目に振り分けているという点で、味わいのある面白い演奏だと思います。