フルートに続くハープの美しいアルペジオで彩られる前奏部は、天空から舞い降りてくるような浮遊感を醸し出して、星空へのイマジネーションが膨らむような、その名にふさわしい演奏です。
この冒頭部分を、同じウィーン・フィルの他の演奏と聴き比べるのも、一興かも知れません。
ウィーン・フィルが演奏するウィンナワルツは、誰が指揮しても同じだと、よく言われます。
ウィーン・フィル固有の独特のリズム感、これはある意味極めてローカル色の強いものですが、これに手を加えることは、カラヤンほどの大指揮者ですら、差し控えたと言われています。
そんな確固としたワルツのリズムを、私ごとき素人の聴覚で、指揮者による演奏の違いを判別することなど不可能ですが…
ただ、冒頭部分からワルツへの流れを比較すれば、演奏を選択することのメリットは大きいんだと、きっとお感じになると思います。
クライバーの指揮するウィンナワルツは、随所にインスピレーションが感じられる、緩急強弱自在の演奏ですが、
それは谷川の水が、地形に沿って急流となったり、緩やかな流れへと変化するように、
自然な流れに身を任せるような、実に爽快で心地良い、いきいきとした表情の音楽と感じられます。
彼の演奏で聴くウィンナワルツだけは、仮にブラインドで聴かされても、多分判別できると思うのです。
クライバーの指揮する『天体の音楽』、特に冒頭の部分は、星座にまつわる様々な伝説をふと思い出すような、そんなファンタジーを感じさせる音楽です。