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ヴェルディ:『レクイエム』

レナータ・スコット(s) アグネス・パルツァ(ms)
ヴェリアーノ・ルゲッティ(t) エフゲニー・ネステレンコ(b)

アンブロジアン・シンガーズ
ムーティ/フィルハーモニア管弦楽団


数あるレクイエムの中でも、モーツァルト、フォーレと並んで、人気の高い作品ですが、

「宗教曲としては、あまりにオペラ的で、ドラマ性が強過ぎる」
「カトリックの典礼に相応しい音楽ではない」

そういった批判は、初演当初から付きまとっていたそうです。

全曲中に4回登場する、合唱が絶叫する“怒りの日”のテーマ、

映画やコマーシャルにも使われてご存知だとは思いますが、もし心当たりがなければ、

“ヴェルディ レクイエム”で検索して、You-Tubeの“カラヤン”か“バーンスタイン”を、聴いてみてください。

このように評される理由も、ご納得いただけることと思います…。

しかしながら、宗教を信仰したことがなく、“キリエ(憐れみたまえ)”や“怒りの日”の持つ深遠な意味など、全く理解できない私ですが、

宗教的な式典云々はさておいても、この作品には、紛う方なく、死者への強い哀悼が込められていると感じます。

朝靄の中から静かに湧きあがる、第1曲“永遠の安息を(レクイエムとキリエ)”での、深い敬虔な祈り…。

第2曲“怒りの日”の、「ドラマ性が強過ぎる」「典礼に相応しくない」と指摘された冒頭や、それに続く“奇しきラッパ”の重々しい威厳からは、

私には、逝きし者への、張り裂けんばかりの悲しみと同時に、生命復活の奇跡を信じる、そんなメッセージが聴き取れるように思えます。

三たび炸裂する“怒りの日”に続いて、“ラクリモサ(涙の日)”の哀切きわまりない音楽には、知らず知らずのうちに目頭が熱くなってきます……。

美しい演奏ではありますが、その中に奇跡さえも信じさせるような、ドラマティックな展開が聴ける、ムーティ/フィルハーモニア盤が素晴らしいと思いますが、

随所に深い祈りが感じられる、敬虔な演奏という点では、ジュリーニ・ベルリン・フィル盤も捨てがたいと思います。

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