以上の3曲から構成されるこの曲は、イベールが海軍士官として航海中に、各国の港に立ち寄った際に見聞した印象や、
ローマ大賞受賞の副賞として与えられた、3年間のローマ留学中の体験を、曲にまとめたものと言われています。
それぞれの曲に、フランス人イベールが感じた異国情緒が感じられ、旅のエッセイのような曲と受け止めて、差支えはないでしょう。
この曲に馴染んだのは、CD時代になってから、デュトワ/モントリオール管弦楽団の演奏を聴いてからでした。
第1曲冒頭の、朝靄に煙る港の風景を描写したパステル画のような、淡く繊細な音色…
第2曲のオーボエが奏する妖艶さ漂う旋律…デュトワのこういった曲での表現の上手さは、ドビュッシーの演奏でも感じていました…
第3曲のスペイン舞曲セギディーリャで始まる活気あふれる盛り上がりは、リズム感が際立って秀でた演奏と感じます。
デュトワ盤は、、今でも一番好きな演奏なのですが、
最近聴いたポール・パレー指揮するデトロイト交響楽団の演奏(1963年録音)では、第1曲冒頭部に、まだ見ぬ土地に対する強い憧れのような情感を感じました。
異国への憧れとは言っても、交通網が発達した近年は、多くの人にとって、海外旅行は容易に手の届く楽しみとなりましたが、
私の子供の頃の海外旅行とは、ハワイなどは年収の大部分を注ぎ込まなければならないほど高額なもので、
しかも太平洋を何日もかけて船で横断する、まさに“見果てぬ夢”のようなものでした。
そんな時代に感じた異国への強い憧れが、パレーの演奏からは聞こえてくるのです。
でも、海外旅行に“見果てぬ夢”を抱かなくなった人々にとっては、パレーの演奏は、感情過多な表現と映るのかもしれませんね。