この曲は無調時代に入る前の初期の作品で、後期ロマン派の影響が残されたもの。
誰の演奏だったかは忘れましたが、初めて聴いた時には、全曲が官能で溢れた曲のような印象を受けたものでした。
1892年に出版され、翌年にはパリで初演されたメーテルリンクの戯曲『ペレアスとメリザンド』は、作曲家たちにも大きな刺激を与えたようで、
1893-1902年にかけては、ドビュッシーがオペラを…
1903年には、シェーンベルグが交響詩を世に問いました。
また、劇音楽として作曲を委嘱された作品としては、1898年にはフォーレが、1905年にはシベリウスが、同名の曲を完成させています。
作曲の動機はそれぞれに異なってはいますが、創作意欲を刺激する作品なのでしょう…。
シェーンベルグの交響詩は、オーケストラだけの単一楽章の作品で、演奏時間が40分を超えるもの。
随所に木管楽器や弦楽器で奏される清らかな、時には官能的とも思える濃い旋律が出現し、大変に聴きごたえのある素晴らしい音楽です。
描写的ではなく、詩的な印象が強く感じられる作品ですので、
聴くにあたっては、あらかじめ物語のストーリーを把握しておくと、
各楽器が奏するメロディーを聴いて、容易に想像をふくらますことができ、
曲をより一層楽しめると思います…。
カラヤン指揮するベルリン・フィルの、木管の妙技や弦楽合奏の緻密な美しさが、この曲の素晴らしさを際立たせているのでしょう。
一例を挙げれば、兄ゴローによってぺレアスが殺害される場面での、厳しいまでに精緻な弦楽合奏のもたらす劇的な緊迫感…
殺害の後のイングリッシュホルン奏する、凍てついたようなメリザンドの悲しみetc.…
素晴らしい演奏だと思います。