ネイティブ・アメリカンの音楽や黒人霊歌から大きな影響を受け、
それまで以上に、数々の素晴らしい作品を誕生させたと言われています。
この曲も、『新世界交響曲』や『チェロ協奏曲』と共に、彼のアメリカ時代を代表する作品の一つ。
『新世界』が完成した後の4ヶ月の夏休みを、ボヘミアからの移民たちが住むスピルヴィルで過ごしたドヴォルザークですが、
異国の地でリラックスできたことによるのでしょうか、曲の構想されてから完成に至るまでに、僅か15日間しか要しなかったと言われています。
若い頃には、重厚長大なオーケストラ曲ばかりを聴いていた私ですが、望郷の念を掻き立てられるようなこの曲をFMで初めて聴いて、一度で好きになりました。
その時に聴いたのが、スメタナ弦楽四重奏団の最初の録音でした。
望郷の念が切々と歌われる演奏で、これを長い間愛聴盤として聴き続けてきましたが…
最近はハンガリーのケラー四重奏団の演奏の方に食指が動きます。
ケラー四重奏団によるドヴォルザーク特有の美しいメロディーは、
望郷の念を謳い上げるようなものではなく、
むしろ、静かに口ずさむような表現、という印象を抱いています。
感情移入が過多にならずに、しかし過不足なく旋律が歌われているためなのでしょうか、
そんな絶妙なバランスによって、これまでに聴いた他のどの演奏よりも、清々しい自然の息吹が感じられる、幸福感に満ちた演奏になったのだと思います…。