密やかな感情の中にも、生き生きとしていて、気持ちが浮き立つような愉しさに溢れた、青春真っただ中を思わせるピアノと、それを支えるオケの軽やかさが素晴らしい終楽章…。
これは、私がシューマンのピアノ協奏曲に抱いていたイメージなのですが…
何処で聴いた、誰の演奏だったのか、どうしても思い出せませんでした。
この演奏が、手持ちのCDの中にあり、
J.フランツという聞いたことのないピアニストを、
晩年のバーンスタイン(1986年録音)がサポートした演奏だったと知った時には、
余りの意外さに驚くとともに、こんなに心に残っているCDの演奏者すら覚えていないなんてと、不思議に思ったのですが…
この演奏を聴いた当時の評論家の発言にマスクされて、印象が薄らいでしまったのかもしれません。
もう一つ考えられるのは、若い頃は情熱的できびきびとした、起伏の大きな演奏をしていたバーンスタインの芸風が、
晩年に向うにしたがって、一音一音に思いのたけを込めた音造りをオーケストラに要求してきたために、テンポが遅滞する傾向があったことは、よく知られた事実。
そんな先入観念を持って聴いたディスクだったために、気持は演奏を受け容れているのに、負の評価を下していた可能性もあり得ることです。
皆さまはこんなことを体験されたことありませんか?
あらためてこの演奏を聴いてみると、第1楽章こそ、お互いに手の内を探るようなぎこちなさが感じられますが、
第2楽章からは、フランツの若々しく溌剌とした演奏にバーンスタインが共感し、伴奏に徹したのではないか…。
これは、良い意味でのバーンスタインの個性が抑えられた、素晴らしい演奏だと思います。