最近聴いたCD

ワーグナー:ジークフリート牧歌

カラヤン指揮  ベルリン・フィル(1988年ライブ)  


この曲は、ワーグナーが、新妻コジマの結婚後初めての誕生日のプレゼントとして、作曲されたもの。

曲名のジークフリートとは、前年に二人の間に誕生した初めての男の子の名前ですが、出産に対する妻へのねぎらいや、感謝の気持ちが込められていると言われています。

作曲の経緯からも推察できるように、全曲を通して感情の高ぶりもなく、穏やかな幸福感に包まれた音楽です。

それほど多くの演奏を聴いたわけではないのですが、曲想のせいかもしれませんが、途中で必ず居眠りをしてしまう演奏も、少なからずありました。

そんな中で、印象的だった演奏をいくつか挙げると、

LP時代の愛聴盤だったフルトヴェングラー/ウィーン・フィルの演奏では、静謐な穏やかさの中に神々しい雰囲気が…

CD時代になってからは、シノポリ/ニューヨーク・フィル盤の、チャーミングとも官能的ともとれる美しい響きに、一時期惹かれたこともありましたが…

最近では、美しい響きの中に、穏やかな牧歌的なのどかさが感じられる、カラヤン/ベルリン・フィルのザルツブルグのライヴ盤を聴くことが多くなりました。

この曲の初演は、コジマの誕生日の早朝、自宅の彼女の寝室横の階段に楽員たちを配置して、予告なしに演奏を開始したと言われています。

そんなエピソードがあるために、ルツェルンに今も残るこの建物をわざわざ訪れるワーグナーファンも多いとか…。

当地を訪れる機会は生涯ないであろう私は、せめて雰囲気の一端だけでも味わおうと、霧が立ち込めた朝に、この曲を聴いたことがあります。

霧の中から聞こえる鳥の声が、違和感なく音楽に溶け込んで、演出効果は満点!

さすがに歌劇王(今でもそういうのでしょうか?)!

早朝に演奏することを考慮して、効果を高める工夫をしたのかと思えるほどに、素晴らしい雰囲気を味わうことができました…。

機会がありましたら、霧や靄の立ち込めた冬の日の早朝に聴かれると、普段とは又違った感慨が得られるのではないかと思いますので…。

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