最近聴いたCD

グリーグ:抒情小曲集第3集op.43

ピアノ:舘野 泉  


私の住む甲信越地方も、一昨日梅雨入り宣言されました。

日本の代表的な避暑地のある地域に住んでいるのですが、最近はグローバル・ウォーミングの影響か、地元の方も、以前より暑くなったとおっしゃいます。

私も当地で生活するにあたって、都会ほど頻繁にではありませんが、よもやクーラーのお世話になろうとは、思いもしませんでした。

この時期になると、避暑地に住んでいながら、より爽やかな空間を求めて、グリーグ、シベリウス、パルムグレン、カスキといった作曲家の、北欧の自然を描写した音楽、それもピアノの涼しげな音色で奏でられる音楽が、むしょうに聴きたくなってきます。

グリーグの抒情小曲集は、66曲のピアノ小品を、楽譜出版にあたって6〜8曲にまとめたもので、全10集からなるもの。

この中で、私が最も好きな曲集は、第3集にあたるop.43…

1)蝶々、2)孤独なさすらい人、3)故郷で、4)小鳥、5)愛の歌、6)春に寄す
以上6曲からなるものです。

曲想については、表題から推察できる通りのものばかりですが、それぞれに春への喜びが感じられる、爽やかな抒情が漂っています。

僭越な言い方ですが、フィンランドに拠点を移されている舘野泉さんの演奏は、やはり同じ日本人の血が流れているためでしょうか、特に抒情的な作品では、北欧の演奏家で聴くよりも強い共感が得られるように感じられます。

“蝶々”の演奏を聴くと、北欧の澄み切った青空がまず頭に浮かんできますし、

“春に寄す”は、曲自体も大変に美しいものなのですが、それに加えてひそやかな喜びの高まりが、どの演奏で聴くよりも感動的に表現されていると思います。

“孤独なさすらい人”では、ふとしたことで喜んだりおちこんだりする、若者の不安定な気持ちが表現されているようですし、

“小鳥”では、まるで恋人同士のおしゃべりを思わせるように、愉しげに演奏されています。

季節限定というわけではありませんが、蒸し暑い今の時期に、一聴されることをお薦めします。

ホームページへ