最近聴いたCD

ハイドン:交響曲第38番 ハ長調

ピノック指揮 イングリッシュ・コンサート  


今年はハイドンの没後200年とか。

そのためか、最近は何種類かあるハイドン交響曲全集(CD33枚組)が、1枚に換算すると、わずか200〜300円程度の値段で販売されています。

10年ほど前でしたら、特別欲しいとは思わなくとも、お買い得感に惹かれて、「そのうち聴く機会もあるだろう…」と自分を納得させて、多分飛びついたことでしょう。

でも最近は、「どうせ聴かずに、埋もれさせる可能性の方が…」と考えてしまいます。

定期的な収入が年金のみという生活事情も大いに関係しているのですが、

「残された人生、今所有しているCDすら聴き尽せるかどうかもわからない」という疑問と、

「それほど良いとも思えない曲(演奏)を聴いて、無駄な時間を費やしたくない」という気持ちが、購入を思いとどまらせる大きな要因にもなっています。

実を言いますと、これまでハイドンを聴いて、「典雅だ」とか、「乗りが良い」とか、もっぱら演奏面で楽しんだ記憶はあるのですが、すごい作曲家だと思ったことは一度もありませんでした。

私は、昔からクラシック音楽に感動を求めて聴いてきましたが、彼の曲を聴いて、鳥肌が立つようなそれを体験したことがないのです。

ですから、「手元にあるのなら聴いてみよう」とは思いますが、「わざわざ買ってまで!」という気持にはなれないのです。

ところが先日、5月31日がハイドンの命日であることをたまたま知って、折角の機会だからと、10数年前に衝動買いした、T.ピノック指揮する“Sturm und Drang(疾風怒濤)”と記された19曲入りのCDをポツポツと聴き始めたのですが…。

まだ7曲しか聴いていませんが、それぞれが個性に溢れた作品だと感じ始めました。

この38番も、つい先ほど聴いたばかりなのですが、

第1楽章:カーニバルのようなにぎやかな楽しい音楽ですが、巧みな転調によるものなのでしょうか、悲喜こもごもな人々の表情までもが思い浮かびます。

第2楽章:様々な鳥たちの声がこだまする森の中で、独りまどろんでいるような音楽です。

第3楽章:トリオ部分でのオーボエとファゴットの掛け合い、こんな組み合わせは殆んど記憶にありません。

第4楽章:再び賑やかさが戻ってきますが、曲が進むにつれ、そんな中からオーボエのソロが独り離れていくような不思議な孤独感が漂います…。

ハイドンって、面白い作曲家だと思い始めました。

こんな音楽を心から楽しめるように、自分自身が変わってきたのでしょうか。

とりあえずピノックの演奏を全て聴いてみて、本当に共感できそうならば、全104曲を聴いてみても良いかなとは思うようになりました。

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