最近聴いたCD

シューマン:謝肉祭

ピアノ:ミケランジェリ


シューマン24〜25歳時のこの作品は、表題の付けられた21の小品から構成されたもの。

一般的には音を途切れさせることなく、21曲が連続して演奏されますが、私の聴いた範囲では、ミケランジェリの演奏(1957年録音)だけが、各曲間で充分な間合いを取りながら進行していきます。

さまざまな旋律が登場し、さまざまな感興を呼び起こしてくれる大好きな曲なのですが、構成が希薄なことに由来するのか、集中力が保たれずに、最後まで楽しめない演奏によく巡り会います…。

そんな中で私が従来から愛聴してきたのは、ホルヘ・ボレットの演奏です。

この曲に限らず、懐の深さを感じさせる悠然としたテンポで開始される彼のシューマン演奏を聴くと、鬱蒼としたドイツの森を想起するようで、それだけで曲想にぴったりだと感じてしまいます。

ところで、私が、前述したミケランジェリの演奏を初めて聴いて、「こんなシューマン演奏もあるのか」と目から鱗が落ちたのは、つい最近のことです。

演奏は、今から52年も前のものですが、

それぞれの曲が、個性的な魅力に輝いていながら、

曲相互の繋がりに、全く違和感が感じられず、

曲が進むにつれてますます感興が高まるような、類稀な演奏と感じました。

多分、超個性的な演奏なのでしょうが、ボレットの、いかにもドイツロマン派の音楽という趣とは異なった、より近代的な魅力を、何ら違和感なく感じることができます。

一つ挙げると、例えば“ショパン”と名付けられた第12曲。

ボレットを始めとして大部分のピアニストは、あくまでもショパン風のシューマンを演奏していると感じるのですが、

ミケランジェリの演奏は、真正のショパンの“夜想曲”かと思わんばかりの響きがして、何だか愉しくなってくるのです。

賛否両論が生ずる演奏でしょうが、私はこんな演奏を聴くことができて、本当によかったと思いました…。

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