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I.アルベニス:組曲『イベリア』第1巻

ピアノ:アリシャ・デ・ラローチャ


アルベニス最晩年の傑作と言われるこのピアノ曲集は、1905〜1908年にかけて全12曲が作曲され、3曲を1組として、4巻に分けて出版されたもの。

南スペインのアンダルシア地方の民族音楽を喚起させると言われています。

生来音楽的な感性に恵まれてはいませんでしたが、世間一般に通じる教養を身に付けたいという気持ちから、独襖音楽を中心にクラシックを聴き始めた私にとっては、スペイン音楽はあくまでも亜流の音楽であって、なかなか馴染むことができませんでした。

嘗て、スペイン系のピアニストの演奏でこの曲を聴いた時には、私の感性では受け容れることが難しい音楽だと感じたものでした。

でも、最近アリシア・デ・ラローチャの弾くイベリアを聴くと、スペイン的な情緒を、何の違和感もなく受け容れることができます。

表現が適切でないかもしれませんが、スペインの曲以外にも幅広いレパートリーを持つラローチャの演奏は、グローバル化されてスペイン色がやや薄められた分、私には聴き易い演奏と感じられるのかも知れません。

第1巻は、以下の3曲によって構成されています。

1.『エボカシオン』には、“死者を呪文で呼び覚ます”という意味があるそうですが、決しておどろおどろしい音楽ではなく、懐かしい人との会話を髣髴するような趣が感じられる、抒情的な美しさが漂います。

2.『港』は、カディス地方にあるサンタ・マリア港のことで、陽光輝く海原や、活気に満ちた港の風景が描かれているようです。

3.『セビリアの聖体祭』は、祭りの賑やかさと、気持ちが浄化されるような静寂とが交互に対照的に描かれた、大変に印象的な音楽です。

この曲は、後年アルボスという作曲家によって、管弦楽版に編曲されています。こちらも聴いてみましたが、原曲に優るようには思えませんでした。

ウィキペディアによると、かのラヴェルがこの曲を管弦楽版に編曲することを考えたが、アルボスが先にその権利を獲得したために断念したとの逸話が残されているそうです。

「もし、実現していれば」と残念に思うのは、私だけではないでしょう…。

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