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交響的印象『スペインの庭の夜』

アルゲリッチ(ピアノ) バレンボイム指揮 パリ管弦楽団


第1曲“ヘネラリーフェ(古都グラナダにある庭園名)”

第2曲“はるかな踊り(アンダルシア地方)”

第3曲“コルドバ(グラナダの西方にある地名)の山の庭にて”

以上のような表題を持つ、3曲によって構成されています。

元来は、ピアノのための3つの夜想曲として発想されたと言われており、各曲ともスペイン的な詩的情緒に溢れた美しいもの。

ピアノのアルゲリッチ、指揮のバレンボイム共にスペイン語圏のアルゼンチンで生まれて、少年期をそこで過ごしています。

今も国際的な演奏家として、全世界を股にかけて活躍する両者ですが、そんな血筋は、スペインを代表する作曲家の演奏にプラスに働くことは明らかでしょう。

この演奏の白眉はアルゲリッチのピアノであることに、異論はないと思います。

協奏曲のように自己主張するような曲ではありませんが、曲全体を通して漂う瑞々しい抒情は、アルゲリッチのピアノから発せられるものであることが実感できます。

“自由奔放”“個性的”“情熱的”etc.の言葉で、彼女の演奏に対する賛辞が送られています。

確かにその通りで、今でも時折取り出しては聴く1960〜1970年代の演奏は、時にものすごく速いテンポで、触れれば鮮血が迸り出るようなスリリングさを有する素晴らしいものです。

しかしそんな中で、ふと立ち止まって抑制された表現の中には、比較するものがないほど神々しいまでの瑞々しいオーラが聴き取れます。

この『スペインの庭の夜』などは、まさにそんな美しさが全曲を覆い尽くした演奏の一つではないでしょうか。

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