最近聴いたCD

ボロディン:小組曲(グラズノフ編)

ネーメ・ヤルヴィ指揮  エーテボリ管弦楽団  


 ボロディンというと、ロシア国民楽派の5人組(バラキレフ・キュイ・ボロディン・ムソルグスキー・R=コルサコフ)の一人で、ロシア民族の伝統と民衆生活に根差した音楽を目指した作曲家とされています。

しかし、代表作と言われる歌劇『イーゴリ公』や交響詩『中央アジアの草原にて』等を聴いた印象からは、ロシア民衆の生活をイメージするたくましさよりも、どことなく貴族的なエレガントさを感じるのです…。

グルジア皇室皇太子の非嫡子として生れ、優れた教育を受けたことと無縁ではないのでしょう。

この曲にしても同様で、日々の優雅な生活をスケッチ風にまとめた小品集という感じです。

原曲はピアノのために書かれた組曲ですが、エントリーしたディスクは、グラズノフによってオーケストラ用に編曲されたもの。

原曲を聴いたことがありませんので比較はできませんが、ロシア王侯・貴族階層の生活を描いた中に、東洋的なエキゾチシズムが感じられる、聴きどころの多い佳曲だと思います。

第1曲 “修道院にて”。銅鑼の音が異国情緒を感じさせる中、木管の奏する印象的な旋律は…
幼い頃、親に叱られて、「こんな家、出て行ってやる!」と啖呵を切って飛び出したものの、周囲が暗くなり始めても誰も迎えに来てくれない時に感じた、寂しいような、悲しいような、そして不安な心境を想い出しました。
そんなノスタルジーが溢れた音楽です…。

第2曲“間奏曲”。中央アジアの草原の夕暮れ時、果てしなく続く空と地平線の彼方から聞こえてくる懐かしい旋律。
オリエンタリズムに溢れた音楽です。

第3、4曲“マズルカ”。
第3曲は、一瞬ショパンのように華やかで洗練された旋律が現れます。
第4曲は、ロシアの夜会を思わせるような優雅さ。

第5曲の“夢”。
夢というより、ただ心地良いまどろみが感じられる、今の時期にピッタリの音楽です。   

第6曲の“セレナード”。
社交界の、優雅で開放的な一面だけがうかがえる愉しさが…。   

第7曲のスケルツォは、メンデルスゾーンを思わせる、妖精の踊りのようなファンタジックな音楽です。
中間部の夜想曲は、夢の中をゴンドラに乗って漂うような心地良さ!   

我が家の周囲の木々も、日ごとに新緑に彩られ始めた大型連休が始まったばかりの黄昏時、風呂から上がってのんびりとする時間帯に聴くにはもってこいの、ストレスフリーな佳曲です。

ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ響の演奏は、そんな魅力を楽しませてくれました。

ホームページへ