最近聴いたCD

ビゼー:『アルルの女』第1、2組曲

パレー指揮  デトロイト響


この曲は中学校の音楽の授業で採り上げられたこともあって、我々団塊世代のクラッシックファンにとってはなじみの深い、代表的な愛聴曲の一つだったのではないでしょうか。

特に第2組曲メヌエットの、ハープの伴奏に乗って奏でられる美しいフルートの音色に惹かれた方も多かったと思います。

私のように楽器を演奏することに腰が引けていた者ですら、この曲に惹かれてフルートを習ってみようかと、真剣に考えたこともあったのです…。

ただし、「大学に合格してから」と、もっともらしい理由をつけて決断を先延ばしにする悪癖は、その頃からの常套手段…。

その所為で、還暦を過ぎた今も、これほど音楽好きなのに、演奏できる楽器は何一つとしてありません。

4曲ずつで構成されるこの組曲は、それぞれが美しく親しみ易い旋律のために、若い頃はレコードからカセットにダビングして、運転中に繰り返し何度も聴いた曲の一つです。

ただ、余り聴き過ぎて、いつ頃からか飽きがきていました。

LPを処分した後に、いつか又聴こうとCDを買ったものの、「今さら…」と考えて、長い間、置き去りにしていた曲でした。

過日、別な曲を目当てに、フランス人指揮者ポール・パレー(1886-1979)の演奏するCDを買ったのですが、偶々そのディスクに収録されていたこの組曲を、軽い気持ちで聴いてみました。

第1組曲の前奏曲が始まった途端に、この曲では今までに感じたことのなかった素朴な感慨が湧いてきて、ほのぼのとした懐かしい気分になりました。

フランス音楽と言えば、知的・おしゃれ・エスプリに富むetc.といった印象を抱きがちですが、地方色がにじんだ曲も多いはず。

この曲だって、舞台はフランスの片田舎、ゴッホの作品でも有名なアルル地方。

大阪府で生まれ育ったとはいえ、母方の実家は今も兼業農家をやっています。そんな私には、素朴な曲や演奏に惹かれる傾向が強いようです。

パレーの演奏を聴いたのは、実はこの時が初めてだったのですが、無用な飾りを排してまっすぐに曲を推進していく、そんな朴訥な演奏をする人だと思いました。

こういった形のフランス物の演奏は、これまでに聴いたことがありませんでした。

買ったディスクは、フランスの作曲家の作品を集めた5枚組のセット物。

美味しいものは、最後のお楽しみとして残しておく習癖のある私は、心身ともに絶好調の時を見計らって、他の曲を聴く日を楽しみにしているのです。

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