なかでも1950年代のパレー/デトロイト響(米マーキュリー)、1960年代のアンセルメ/スイス・ロマンド管(デッカ)などは、当時のHigh-Fidelity録音(今や死語?)として勇名を馳せたものでした。
オーディオ的には第2楽章第2部の再現がポイントになるのでしょうが、そちらにターゲットを絞ると、お金がいくらあっても足りません。
ですから機器を選ぶ時には、専ら第1楽章第2部でのオルガンの響きが心地よく聞こえるかにポイントを置いていました。10年以上も前の話ですが…。
第1楽章冒頭に奏される、晩秋の冷涼な澄み切った大気を髣髴させる哀愁を帯びたオーボエの旋律は、心惹かれる素晴らしい開始部だと思います。
しかしその後に続く第1部は、落ち着く先がない焦燥感が全体を支配しているように感じるため、余程心身ともに充実した状態でないと、私には聴き通せない音楽です。
しかし、一転して穏やかなパイプオルガンの和音に導かれて始まる第2部は、静謐で厳かな透明感が漂ったもの。
弦のユニゾンで奏されるアダージョの主題は、恰も真青に澄んだ秋空に吸い込まれていくような浮遊感を伴い、その美しさには、ただ陶然としてしまいます。
第2楽章第1部は、激情と、ピアノの奏する煌びやかさが葛藤するような不思議な音楽。
葛藤が一段落して静けさが訪れた後に始まる第2部は、勝利の凱歌をあげるかのように、パイプオルガンの重低音が響き渡ります。
嘗て、ヤノフスキー/フランス国立管の演奏を大阪のシンフォニーホールで聴きましたが、会場全体を土台から揺るがさんばかりの、有無を言わせぬ圧倒的な迫力には、ただただ感服するばかり…。
これほど効果的な演出はないだろう感じ入りました。
我が家のオーディオでは、そんな迫力を求めることはできませんが、それでも感動は過不足なく伝わってきます。
この曲、最近はデュトワ/モントリオール管のディスクを良く聴いています。
サン=サーンスの曲を聴いて、才が溢れて饒舌に過ぎると感じることが、時折あるのです…。
この曲の両楽章の前半部(第1部)もそのように感じて、うんざりすることも多いのですが、どちらも後半部(第2部)が大好きという、不思議な交響曲です。