最近聴いたCD

チャイコフスキー:交響曲第5番

バーンスタイン指揮  ニューヨーク・フィル


高校時代、放課後の校内からは連日、吹奏楽部が練習するこの曲の第4楽章が聞こえてきました。

コンクール至上主義の昨今では、どの高校も都道府県大会更には全国大会での上位進出を目指して、技術的に難度の高い曲を演奏する傾向が強いそうですが、当時の我が母校のレベルでは、どう頑張ってもこの曲が目一杯だったとか。

しかし技術面のことはさっぱり分からない私には、こんな素晴らしい曲を吹ける吹奏楽部員を、ただひたすら羨ましく思ったものでした。

チャイコフスキー特有のメランコリーに満ちた旋律と、そんな気分を打ち破るような金管の咆哮。

若い頃からコンサートやディスクで様々な演奏を聴いてきました。

そして誰の演奏を聴いても、、その度に気持ちが高揚し、些細な悩みなどは雲散霧消するほどの爽快感を得たものでした。

しかし自分の聴覚が曲にマンネリを覚えた所為か、ここしばらくは心の琴線には触れる演奏には巡り会えなくなりました。

今は聴きたくなると、
バーンスタイン/ニューヨーク・フィル盤(1988年録音)、
ムラヴィンスキー/(旧)レニングラード・フィル盤(1960年録音)
のどちらかです。

バーンスタイン盤は、彼の晩年の演奏に共通するところですが、各フレーズを思いの丈を込めて熱っぽく歌い上げています。

そのために全体としてのテンポは極めて遅く、曲が止まるのではないかと思える個所もありますが、逆にアグレッシヴに突進する部分は、他のどの演奏よりも早く感じられます。演奏時間は52′37″。

「やり過ぎ!」と批判する方も多く、好悪の分かれるところですが、私にはそれが曲想に合致しているように思え、気持ちが熱くなる大好きな演奏です。

一方のムラヴィンスキー盤、申すまでもなく昔から名盤と評価されているディスクです。

こちらは、一太刀で骨をも寸断する名刀の切れ味の鋭さを連想する、恐ろしいまでの凄味を湛えた演奏です。

全曲は、一貫して速いテンポで進められますが、感傷を排した冴え冴えとした旋律の美しさは特筆に値するものです。
こちらの演奏時間は40′48″。

演奏時間だけでなく、片や情熱的で片やクールな演奏等々と好対照なディスクですが、
どちらも指揮者の毅然とした主張が貫かれた緊張感漲る演奏で、感動の大きさは並大抵のものではありません。

エントリにあたって、どちらかを選ぼうと思いましたが、結局決断がつきませんでした。

この曲が大好きで、もしこれらの演奏を未聴の方がおられましたら、是非一度お聴きになることをお勧めします。

 

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