最近聴いたCD

パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第2番

アッカルド(ヴァイオリン)  デュトワ/フィルハーモニア管


パガニーニの作品中で、一般的に最も広く知られている旋律と言えば、この曲の第3楽章冒頭にソロ・ヴァイオリンによって提示されるロンド主題でしょう。

これは、後年リストによって『パガニーニの主題による大練習曲第3番(ラ・カンパネラ)』等に編曲されたことによって、我々一般愛好家に最も馴染み深い名曲の一つとして、死後170年経った今日でも広く知れわたっています。

特に日本では、TVのドキュメント番組で某ピアニストの生涯と絡ませて放映されたお蔭で、演奏会では客引き用のプログラムとして近年はもっとも頻繁に演奏される曲のようですし、ピアノ名曲集と称するディスクには必ずと言って良いほどに収録されています。

そして個人的には、アンドレ・ワッツの胸のすくような爽快な演奏のファンでもあります。

ところで、パガニーニは超絶的な技巧を有する、歴史に名を残すヴァイオリンの名手として知られていますが、その一方では、美しく親しみ易いメロディーを数多く作曲しています。

特にギターのための作品などは、ヴァイオリン曲での超絶的な技巧とは全く趣を異にした、地中海の澄み切った紺碧の空や海を髣髴させるような、シンプルで透明な美しさに溢れた旋律をもち、私自身はヒーリング音楽として楽しんだりもしています。

第2番の協奏曲も、初めて聴いた時にはシンプルなメロディーの美しさに惹かれ、こんな親しみ易い曲がなぜコンサートやCDにあまり採り上げられないのか、不思議に思ったものでした。

でも何度か聴くうちに、この曲のオーケストラパートは、単なるソロ・ヴァイオリンの引き立て役の領域を出ないもの、そう感じるようになりました。

例えば2楽章の冒頭、ホルンやそれに続くフルートが夜明けのすがすがしさや鳥の囀りを想起するようなチャーミングなメロディーを奏するのですが…、

ところがそれを引き継いだヴァイオリンのソロは、より魅力的なメロディーを奏でるといった具合に…。

そして有名な第3楽章。鐘の音を模したヴァイオリンの特殊奏法(フラジオレットというそうです)と、オケの奏者によって“チリンチリンチリン…”と鳴らされる小さなベルの音との掛け合いが、なんとも愛らしく感じられます。

この作品は独奏者に関心が集中するように書かれているのでしょうから、オケの奏者にとっては面白くない曲なのでしょうね。

でも聴き手にとっては、そこかしこに魅力的な旋律がちりばめられた、ストレスフリーに楽しめる本当に心地良い音楽だと思います。

 

ホームページへ