最近聴いたCD

ラフマニノフ:前奏曲op.23-1〜10

ピアノ:アシュケナージ


今朝、浅間山に初冠雪が見られました。

朝から快晴で気持ちのよい日ですが、山からの吹き下ろしの風は冷たく、うっかり手袋を忘れて散歩に出ると、手がかじかんできました。
気象予報では、明朝の最低気温は−6℃とか。いよいよ本格的な冬が到来します。

私はラフマニノフの作品が、正直なところあまり好きではありません。
彼の作品の多くには、特有の濃厚なロマンを有する旋律が綿々と続き、時に逃げ場のない重苦しさを感じてしまうからです。

にもかかわらず、この季節になると、ピアノ協奏曲第2、3番や交響曲第2番といった有名作品が聴きたくなってきます。
それらの作品では、むせかえるような濃厚なロマンに対比する、瑞々しい抒情的な旋律の美しさがより印象的に思えて、時にそんな音楽に浸りたくなるからです。

ところで、この前奏曲集をアシュケナージのピアノで聴いた時、それまで抱いてきた濃厚なラフマニノフのイメージとは異なり、全曲を通して瑞々しい抒情で統一された曲のように感じました。

暖かく豪奢なリビングで、ブランデーグラスを傾けながら、雨に濡れた舗道に輝く光のイルミネーションを見、雨だれの音を聴くような、都会的なロマンティシズムに溢れた第1曲。
大阪時代の生活が、ふと懐かしく思えてしまいました…。

一人で夕映えの海辺に立って、岩礁に打ち寄せる波を見つめているような、そんな感傷を思い起こす第2曲。

若かったころの心の逡巡を思わせる第3曲や、同じく胸に秘められた甘い想いを髣髴させる第4曲…。

少しテンションが高目な陽気なリズムと、中間部の愛らしくもメランコリーな静けさが不思議な対比をなす第8曲…。

夕暮れ時、遠くで響く鐘の音を聞きながら過ぎ去った一日を思い返して、余韻に浸るような感慨を覚える第10曲…。

その他の曲も、残念ながら私の力では表現する言葉が思い浮かびませんが、いずれも瑞々しく、親しみ易いものばかりだと思います。

じっくりと耳を傾ければ、自ずと聴き手の想像が膨らんでくるような、そんな曲集であり演奏だと感じました。

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