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メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第4番

イザイ弦楽四重奏団


メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲!

数年前、我が家を訪れてくれた学友との雑談の中で、彼が弦楽四重奏の作品を残していたことを初めて知りました。

40歳代の半ばから約5年間、NaxosやMarcoPoloをはじめとする新興レーベルから発売されとぃた、未知の作曲家の隠れた名曲を求めて、専ら『レコ藝』誌上での評価や、ジャケットを見ての閃きを頼りに、無名作曲家の聞いたこともない曲を200枚近く購入しました。

しかし“当たり籤”の確率は極めて低く、気に入ったディスクは、わずかに5〜6枚…。

その理由は、曲そのものが聴き手に訴えるだけの資質を有さないのか、演奏家が未だ曲の十分に曲を解釈できていないのか、私の感受性の乏しさ故なのか等々。

いずれにしても、私には理由を特定する知識は全くありません。

ただ余りの確率の低さに辟易し、私の興味は、次に名の知られた作曲家の未知の作品に向けられました。

ありがたいことに、こちらは大変に高い確率で“当たり籤”に遭遇することができました。

いい年齢をして大人気のない話ですが、そんな経緯もあって、大作曲家が7曲も書いた弦楽四重奏曲の存在すら知らなかったという事実は、音楽通を自認していた私のプライドを少々傷つけました。

このディスクを早速入手した理由は、「聴いてみたい」という興味と同じくらいに、自分の耳で聴いた上で「単なる凡作」と結論付けることによって、せめてもの溜飲を下げたいという、つまらぬ競争心からなのです。いやはや……。

イザイ弦楽四重奏団の全集を購入したのですが、私の大人気ない期待は、幸いにして大きく裏切られました。

いずれもがメンデルスゾーンらしく瑞々しく爽やかで、美しい旋律に溢れた作品でした。

それらの中で、最初に心惹かれたのがホ短調の第4番。

立冬が過ぎた頃、我が家の周囲では、澄み切った青空を背景に黄金色に染まった落葉松林を見ることができるのですが、爽やかで少し物悲しい第1楽章の感慨が、そんな周囲の風景にあてはまるように感じました。

「有名なホ短調のヴァイオリン協奏曲と同じ調性だから、取っ付き易かったんじゃないかな」。後日、私からの感謝のメッセージに対して、友人はそのように応えてくれましたが…。

いずれにしても、7曲の弦楽四重奏曲は、今や愛聴盤の仲間入りを果たしています。

日没が日に日に早まり、寒さも増してきて、気分が塞ぎがちになるこの季節です。

そんな周囲の雰囲気に同調するような憂愁を伴いながら、少しばかりの明るさと快活さをもたらしてくれる、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は、そんな作品です。

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