最近聴いたCD

J.S.バッハ:パルティータ第6番BWV830

ピアノ:ロザリン・トゥーレック


今日は立冬。夕方のニュースを見ていると、北海道では平地で積雪が見られたとか。

我が家の周囲の黄葉した落葉松が、風もないのに、日差しを浴びて黄金色に輝きながら落葉する美しさは、ため息でるほどです…。

北東斜面に建つ我が家では、西日が遮られるために、四時近くになると夕闇が迫ってきます。

これから年末にかけては、日暮れが益々早まり、寒さも日ごとに増してくるために、気持ちが塞ぎがちになる季節でもあります。

正月が明けて、光の春が実感できるまでの約2か月は、毎年その厳しさを身にしみて感じています。

ちょうど一年前の今日、ロザリン・トゥーレックのピアノでパルティータ第6番を聴き(1957〜58年録音)、とてつもない感動を受けました。

冒頭の高雅で華やかな旋律が、音量とテンポを落としてひそやかにしかし決然と形を変えて繰り返された時、これからバッハという巨大な森を散策するのだと、素晴らしい期待を抱きながら曲を聴き進んだ、そんな記憶を思い出しました。

ニュースで今日が立冬であることを知った時、もう一度この演奏が無性に聴きたくなりました。

あの時、スピーカーから流れる演奏に感じた峻厳さが、なぜか『立冬』という季節のイメージと重複するようで…。

改めてこの演奏を聴くと…。冒頭から一瞬にして心をとらえ、霊感に富んだ演奏が展開していく、そんな印象は全く色褪せておりません。

むしろ全7曲が、前回聴いたとき以上に格調高く、かつ感銘深く聴き通せました。

小細工をいっさい弄さない、正当で堂々とした演奏だと思います。

「昔は良かった」などとは、安直には言いたくないのですが、こんな感慨、最近の新譜からは滅多に得られなくなりました。

バッハの好きな方には、トゥーレック女史の演奏は昔から高く評価されていたのでしょう…。

しかし私の場合は、アメリカ生まれ(即ち本場の演奏でない)との偏見から、情報源としていたレコ藝に掲載されていたとしても、碌に目も留めずにいたものと思われます。
名前さえ知らなかったのですから…。

何故ディスクを買ったのか、その経緯すら覚えていません(多分店頭での衝動買いでしょう)が、これは稀に見る素晴らしい買い物でした。

“格調の高い凛々しさ”という点で、今まで聴いた中でも最高のバッハだと思います。  

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